
開催日:2026年8月22日(土)
会場:府中市市民活動センター プラッツ会議室
『猿の手(The Monkey’s Paw)』はイギリスの小説家W.W.ジェイコブズが1902年に発表。民話や童話によくある「3つの願い」の物語を下敷きとする怪奇小説。
【あらすじ】
ホワイト一家は友人モリスから、「3人の人それぞれに3つの願いを叶えさせるが、運命を無理に変えようとすれば不幸を招く」という魔力を持つ猿の手のミイラをもらい、軽い気持ちで借金返済のために200ポンド欲しいと願う。 翌日、息子は勤め先の工場の事故で死亡、会社から見舞金200ポンドが出る。夫婦は深い悲しみから「息子を生き返らせて」と2つ目の願いをかける。 夜中、ドアをノックする音に気づいた妻は息子が帰ってきたと狂喜して開けようとするが、夫は必死に止め、最後の3つ目の願いをかける。音が止んで扉を開けると外には誰もいなかった。
【読書会で出た感想】
モリスはなぜ猿の手を持ってきた?
👧モリス曹長は、一人目も自分も不幸になったのに、なんで猿の手を持ってきたのかしら。
👨モリスは「赤ら顔」でやって来ますね。ウイスキーをすぐに飲み干してしまうし、どうやら酒びたりの生活を送っているらしい。深い屈託を抱えているんだ。
👧自分がひどい目にあったので、その不幸をわざわざホワイト氏に押し付けに来たってこと?
👵軍隊でホワイト氏からパワハラを受けて恨んでいたのかも。
👧だから仕返しをしようと? でもせっかく持ってきたのに火に投げ込むなんて、どういう神経かしら。
👩🦰ホワイト氏が興味津々なのを見透かして、わざとじらせているのよ。
👨🦱いや、ホワイト氏に災厄がふりかかるのを防ぐ気持ちがあったのかもしれない。でも3番目の犠牲者を見つけなければならないという掟に縛られている。
👩「不幸の手紙」を友達に送っちゃう感じかな。
3つ目の願いは何?
👩🦳神様や魔術師から願いを叶えてもらう話って、日本の民話や説話によくありますね。
👩あるある、グリム童話のソーセージの話を子供の頃、読みました。
👩🦰民話や説話を土台に、作者が想像を膨らませて小説に仕立て上げたということではないでしょうか。
👨第3の願いは具体的には語られないが、いったい何を願ったのだろう。
👩最初の状態に戻してよと、私なら願うな。
👩🦳200ポンドを願った翌日、息子が悲惨な死を遂げる。これが1回目の報い、では息子の復活を願った報いは何かしら。第3の願いも叶ったのなら報いを受ける筈。それは何だったのか気になるわ。扉の向こうが閑散としていたというだけでは軽すぎるわよね。
👵願いが叶う話は多いけど、この小説は何だか後味が悪いわね。運命に逆らうと仕返しされるのなら何を願っても結局不幸になる。
👩🦰この小説、神頼みなんかしないで自力で解決せよという教訓話かしら。
👱実は猿の手には何のご利益もなくて、息子の事故死は偶然の出来事に過ぎないのではないかと私は思いました。息子の復活がはっきり描かれているわけではない、親が勝手に思い込んでいるだけ。3番目の願いも具体的な記述はない。家の外には前と変わらぬ荒涼とした道が続いているだけだし。願いは偶然の出来事のように成就すると書かれていますけど、あの部分は作者が伏線を張っているんだなと感じました。
この小説、なんでこんなに読みにくい!?
👩登場人物は最初3人しかいないのに、誰が話しているのか、誰の視点で語られているのか、わかりにくかった。
👩🦰私も、何度も読み返してしまい、なかなか読み進められませんでした。
👩息子のハーバートは子供なのかと思ったら、いい年をした大人だったわ。
👵120年も前に書かれた作品で、新旧とりまぜて翻訳も多数出ている。古臭い言い回しもあるようですね。
👩原文も古風な書き方をしているのかしら。訳者の解釈もそれぞれ異なっていそうですね。
👩🦳私は、最初の部分は映画を見ているような感じがしました。イギリスの田舎町、雨の降る寒い晩、暖炉があかあかと燃えている居間でくつろぐ仲良し一家。情景が目に浮かんだけど。
👩それが一転して息子の事故死。ドラマチックな展開ですね。何回か映画化されているようですね。
👩🦳でも、ズタズタのゾンビ息子が出てきたらかえって興ざめじゃない? 姿は見えないけれどノックの音が高まったりするシーンとかの方が恐く感じる。
👵荒唐無稽のオバケより、見えないものの方が不安を掻きたてますね。この作品は日本人好みかも知れませんね。
子を亡くした親の気持ちと戦争の影
👩🦳最愛の息子を突然失った母親は、息子の姿がどんなであろうと復活を願う。気も狂わんばかりに扉を開けようとする。私にも息子がいるので、わかる気がしました。
👩🦰両親の喪失感は相当に大きかったのですね。おしどり夫婦だったのに会話も途絶え、夫婦仲も冷え切ってしまったのね。
👩生活に大きな不満を感じているわけではないのに200ポンドを願ったばかりに息子が死んでしまった。自責の念も深かったでしょう。
👩🦳ハーバートは夫婦にとってたった一人残った息子と書かれていますね。上の子供も何人かいたのでしょうか。
👩もしかすると、上の子供達は戦死したのかな。この小説は1902年に発表されているから、1800年代の戦争ですね。
👨🦱当時のイギリスはアジアやアフリカで大規模な植民地戦争をやっている。父親も退役軍人だし、猿の手を持ってくるモリス曹長はかつての部下だった。
👩猿の手に呪いをかけたのはインドの呪い師ですよね。インドはイギリスの植民地だったわね。
👨🦳戦争が影を落としているということか。
機械に挟まれて死ぬということ
👩ハーバートは勤め先の工場で機械に挟まれて死んだのに、会社は責任を負わないと言っている。見舞金は出すけどね。
👩🦰当時はどのくらいの価値だったのか、気になりますね。
👩雨が降ると水が道路を滝のように流れる、つまり貧しい人達が暮らす坂下の小さな貸家に暮らす一家が、200ポンドあったら持ち家に住めるのになあと夢見る程度の金額。
👩🦰この時代は機械工業が発展している筈だけど、労働者階級は貧しそう。貧富の差が拡大している。
👨🦳経営者は何も咎められず、息子の死は200ポンドの見舞金で片付けられてしまった、恩着せがましく。
👩🦳この小説は120年以上前に書かれたというけど、現代社会にも何か通じるものがありますね。単なる怪奇小説として片付けられないという気がしてきました。
